#17歳 彼女の場合
6月29日
「きっと人間は創造力を持ち過ぎたのよ。」と彼女は言った。
雲がゆっくりと流れるある晴れた日。
気持ちのいい風がビルと私達の間を何度もすり抜けていく。
彼女は紙パックの野菜ジュースのストローを噛みながら、一人、お話しを始めた。
神様はきっとこんな人間なんて造るつもりなかったのよ。
ただ詰まらない世界にちょっと色を付けるくらいのつもりだった。
でも人間が勝手に一人歩きし過ぎたの。
いろいろ出来るようになったから、つけあがったのよ。
何を勘違いしたか、人間は自分たちを神様に近い存在だと思い始めた。
もしかしたら神様自身だと思ったのかもしれないわ。
そのわりに、人間ではどうしようもなくなると人間は”神様”を作って、
祈りを捧げたの。
情けないわね。
神様ももう面倒くさくなっちゃたのかしらね。
一頻り話すと、眠そうな目で空を見上げた。
流れる雲は変わることなく、ゆっくりゆっくりと頭上を通り越していく。
口からストローを放し、ひとつの雲を追いかけ、仰け反りながらぽつりと零した。
「放っておけば、きれいに消えてなくなるのかしら。」
首を戻して、またストローに口をつける。
「今、口に含んで糧としている物も
全て人間用に造り換えられた物だと思うと吐き気がするわ。」
と言うと、彼女は紙パックのジュースを音をたてて飲み干した。
「それじゃぁ、私達もそろそろ消えるのかな」
と零す私に、「帰るとしますか」と微笑みながら彼女は歩みをすすめた。
遠くの空はオレンジ色に染まっていた。
久しぶりにきれいな夕日を見た、6月のある日。