#18歳 彼女の場合
3月1日
「 温かい春の訪れに 胸高鳴り… 」
青かった空は太陽に染められて、オレンジ色を織り込んだ。
気持ち悪い生温かい空気の群れが流れ、
排気ガスの匂いを際立たせる。
広いコンクリートの道路に這いつくばった白線の進む先には
きれいなライトが夕日に負けて、薄暗く光っている。
道を歩き考える。
もう1年も前の事。
今さら思っても無理なこと。
君は声を掛けてくれて、ほんの少し幸せだった。
今なぜこんなことを思うのか…。
きっとそれは今もまだ考えているから。
どうして、あの時素直に言えなかったか。
どうして、逃げてしまったのか。
どうして、はっきりと伝えなかったのか。
もし言っていたら、君を傷つけていた。
…だから言わなかった。
でも気付く。
もっと君を傷つけてしまったことを。
どちらを選んでも、君を傷つけてしまったと思う。
でも、もし逃げずにはっきりと伝えていたならば、
この靄々と君の中の靄々は少しは薄らいでいたのかもしれない。
「ごめんなさい。…ありがとう。」
今さら、綺麗事にしか聞こえないと思うけど、できれば聞いて欲しい。
夕日に背を向け歩き出した先には、
つい最近まであったはずの大きな工場が
いくつかの小さなモノへと形を変えていた。
ガラスが外れかかった窓から、背後の夕日が反射され、
夕日に負けたライトのような薄い影を、小さく照らしていた。
「 私達は 今… 」