#17歳 彼女の場合
3月24日
広く淡々と晴れわたった午後の空。
耳に届くのは、はずしたMDのイヤホンからの微かな音と、
緩やかな車の音の波。
口を開いた窓からは、優し気な陽と静かな風が広い部屋を通り過ぎていく。
そして、頬杖をつき、手元に置かれた真っ白な解答用紙から目を反らす。
考えたのは特別なことでなく、取り留めのないことで、、、。
遠くで、渡り廊下を駆ける音が聞こえた。
パタパタと忙しく響くその音は、彼女のことを思い立たせた。
仲の良かった彼女、、、彼女のことは素直に好きだった。
友情の「好き」なのだけれど、どこか違う気がした。
でもそれは、恋愛感情の「好き」でもなく、家族のような「好き」でもなかった。
、、、多分、憧れだったような気がする。
仲が良い分、近いのかも知れないけれど、時々感じる遠さがあった。
その遠さは、時には自然に、時には悲しく思った。
思いは時に変わり、時は思いに変わった。
下らないことで、喜んだり、沈んだり、羨ましかったり、、、。
、、、多分、嫌われたくなかったんだ。
一人が怖くて、嫌われたくなくて。
もう、一人にはなりたくなかったんだ。
でも、彼女は一緒にいてくれたから。
本当にありがとう。
もう少し自分が強くいたならば、こんな事は思わなかったはずなのに。
いろいろ考えて、悩んだから、その分だけ「ありがとう」。
風が吹き、空気が頬の横を流れた。
風にのせて、保健室の消毒薬の匂いがした。
いつの間にかMDは止まり、音のなくなった部屋には、
窓と、その外に広がる白い雲。
そして、それを見守る綺麗な青空だけが残った。
君にはたくさんのモノを貰いました 本当にありがとう