#01:携帯電話
意 思 が 弱 く て 困 る ───
「またね」
そんな言葉が最後のやりとり。
よくある話か、なんて思っても期待する私はバカかもしれない。
だらだらと見もしないテレビをつけっ放しで、
意味のないセンター問合せ。
相手に執着できる、こんな自分にちょっと若さを感じてみたり。
テレビの中では最近よく見る若手のお笑いコンビが、がんばってコメント中。
なんだか見てるこっちが切なくなってくる。
張り切りすぎて空回り。
わかるよ、その頑張りは。
でも冷静に見ると、結構痛々しいんだよ。
うん、まるで私のよう。
でも若手のお笑いコンビはうまいこと言ったのか
テレビからは笑いの声が高々と響いた。
これ、後から入れた声だったら余計切ない
とか考えながら、意味もなく携帯のボタンを弄ぶ。
番組も終盤。
テロップが流れて、テレビの中は笑顔笑顔。
私もそろそろ笑いたい。
そう思う自分に苦笑しながら、テレビのスイッチを切った。
ついでに携帯の電源も切って、ベッドに軽く投げて捨て、立ち上がる。
固まった体を伸ばして、溜息ひとつ。
がらんとした部屋に、溜息もうひとつ。
幸せが逃げ切ってしまう前に、「甘いもの」の摂取を。
安い幸せを買い求めにコンビニでも行ってこよう。
── 帰ってきたら、電源を入れる自分が想像できる”自分”に絶望。
── 待っても、発しても届かない言葉に決別。
── 最後ぐらい笑って再生。
(携帯依存症)
#02:はさみ
お い お い 、 用 途 違 う ん じ ゃ ね ? ───
ぱちん ぱちん
お昼休み、パンも1個食べた。
のどか過ぎる。
遠くまで続いている青い空に
時々通り過ぎる薄い雲がかわいい。
あと30分もある昼休み。
窓際の席、最高。
窓は全開。
でも暑くないし、寒くない。
ぽかぽか気持ちいい。
窓に背を向け、もたれかかりつつ、
椅子の上で体育座り。
ぱちん ぱちん
「おまえ、髪落ちてんじゃん」
ぱちん ぱちん
「だって、落としてんだもん」
ぱちん ぱちん
「掃除しろよ」
ぱちん ぱちん
「放課後、掃除あんじゃん」
ぱちん ぱちん
「それ女としてどうなの」
ぱちん ぱちん
「今さらじゃね?」
枝毛撲滅に夢中なあたし。
毛先しか切ってないし。
そんな大量に髪が落ちてるみたいに言わないでほしい。
ある意味、髪もあたしの一部だ。
汚いもの扱いされるのは、不服だ。
まぁ結局ゴミだし、…ある意味、生ゴミか?
汚ね。
「だいたいなんでそんな枝毛あんだよ」
ぱちん ぱちん
「知らん」
ぱちん ぱちん
「おまえも暇人だな」
ぱちん ぱちん
「あんたもね」
ぱちん ぱちん
今日も暇人なあたし達は
自分の端っこを切り落としながら
とりとめのない言葉を吐きつつ
この青空の下 すくすく育つ。
── テスト返って来るの、めんどいな。
── 授業は楽じゃね?
── テストの存在自体がめんどい。
(切落式ゆとり教育)
#03:本
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#04:歯ブラシ
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#05:ボールペン
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