#オレンジ
生温かい お湯に浸かって このまま溶けたいと思った
生温かい 風にあたって このまま流れたいと祈った
生温かい 毛布の中で このまま朝が来なければと願った
独りの空間 生温かい空間
時には それが 気持ち悪く 吐き捨てようかと思った
でも 白く薄くオレンジが含まれた その空間に
僕は 今日も 留まり続ける
#乗合
暗い...暗い...暗い...夢から目が覚める
鈍い朝の光の中を 僕の乗ったバスは 「 」に
乗り合わせるのは 人間不信のおしゃべりな鳥と
全てを知った様な無口の鳥
くだらない... 見下すようにしゃべる鳥
・・・・・... 耳を遠くする無口な鳥
毎朝毎日 乗り合わせていた僕は 全てに 慣れて
そして 気付く
僕も同じなんだと
僕も汚く...醜く...戻れないことを
僕も鳥なんだと
相手を平気で罵倒して 聴いても聞かぬフリをする
そんなバスに慣れてしまった 僕は
どうする事も出来ず
耳を塞いで 逃げ廻る... もう 戻れない
このバスから 逃げ出したい...
もう... もう...
五日後、僕は一人 バスに乗って
待ち望んだ「 」へと...
#線路
夕日に染められた 錆びた線路は 奇声をあげて 西へすすむ。
西から射す 橙色に
東の暗闇は劣ることなく 浸蝕を続ける
#視界
西から射す 橙色に
東の暗闇は劣ることなく 浸蝕を続ける
いつか本当に この世界に嫌気がさしたら
この日を見ながら 目を橙色で焼こうと思った
(闇に押し潰されることのない 橙色は
強さを増すにつれ 白光へと姿をかえる)
#途切れる息
今日 貴方の息が途切れるのなら
私は 途切れることのない想いを 捧げましょう
#輪
悲しいのは 疲れたから
君が笑うのは 貴方がいたから
僕が笑うのは 君達がいたから
#十月ノ日
秋風が髪を揺らせば
君が空で微笑んだ
いまだ見ぬ 君の姿を 思い
いつか出会うことがあったなら
涙を見せずに 笑って云うよ
「本当に本当にありがとう」と…。
#移り逝く日々の中で
笑った顔が思い出せないよ
どうすれば 笑ってくれるかな
笑っているかも確かめられないけど
今、貴方は笑顔でいますか
#背景の空
これだけたくさんの人に溢れているのに、
どれだけの人がこの夕日に気が付くのでしょう。
美しく儚い この空に。
#家路
夕日が闇に飲まれて
少しずつ街には明かりが灯る
人々は 明かりの下に 足を早める
明かりの下には 温かいぬくもりを
そして
どの明かりの下にも たえまない笑顔を
#順飲
膨張した太陽が
もうすぐ僕達を飲み込む
飲み込まれたら
どこに行こうか…
#昼下がり、この世界に
本気で願ったんだ
お願いだから 笑顔でいてね
もし命が欲しいなら 私のをあげよう
もし誰かが犠牲にならなければいけないなら 私が逝こう
大丈夫 悲しみは癒えるんだ
悲しみは紛らわすこともできるんだ
私のために― そんな理由でよかったら
いつでもあげるから 笑顔でいてね
忌み嫌われて 不快な思い出しか残らなくても
私を理由に 少しでも苛立ちが収まるなら
どこにでも出て行くから 笑顔でいてね
私と云うものに触れた人達
私を忘れて 笑顔でいてね
のどかに でもどこか忙しなくすすむこの世界に
笑顔でいる貴方たちよ
いつまでも
いつまでも
そこにいてね
#いそぐ足
私がここで せかせかと動き回るのは
死ぬまでの暇つぶし
暇つぶし
そう理由をつけて
今日もせかせか動き回る
私がここで 必要としているのは
暇つぶしに耐えられるだけの
無償の愛情
無償の愛情
そう名前をつけて
今日もせかせか生きいそぐ
#同調
久しぶりにみた夕陽が
また昨日と明日を連れてくる
泣かないでと
慰めるような 儚い光は
少しずつ覆いかぶさる闇夜を
振りはらうことなく
ただ静かに身を沈める
#安息それは___
信じたい 愛したい
でも 私は何も守れない
守りたいものは手を離れた
守っていたものは壊れてしまった
もう価値なんて
もう意味なんて
あるのか分からなくなった
信じてもらえる
愛してもらえる
それすら 素直に受け取れなくて
綻びだした心のすみっこが
いつの間にか 大きな穴になってたんだ
気づいたら
もう遅かったのかな
気づけたら
まだ変わってたのかな
薬でも飲めば休まるのか
誰かに話せば救われるのか
そこまでする価値なんてなんだ
そこまでする気力もないんだ
だからゆっくり眠ろう
ちょっと疲れたんだ きっと
だから少し休もう
#輝る空
嵐の去った街に 夕日が差し込む
すべてを流して 雫で光が反射した
浄化された世界に見えた
生きるとか死なないとか
そんな漠然とした理由よりも
それが錯覚だとしても
今ここで 私は息をしている